目次
はじめに
新規事業の立ち上げや起業などで新規プロダクトの検討を行うことになり、アイデア開発からMVP構築を行い事業化判断する情報を揃えるといった場合に、大きな検証ポイントが2段階あります。
※もちろん、案件特性や顧客の整理状況に応じてどこまでを案件スコープとするかはあるので一概には言えません。
それが、問題仮説とソリューション仮説です。
問題仮説というのは、こういった課題が世の中に本当に存在するのか、その課題を持った顧客が存在するのか、またその顧客のその課題に対する我々が考える独自の価値に受容性があるのか、そのような問いに対する検証を行なっていきます。文献によっては、この部分を顧客仮説、問題仮説、価値仮説といった形でさらに細分化されていたりしますが、私たちではこの仮説を1回の検証で確認するため「問題仮説」という一括りにしてまとめています。
一方で、ソリューション仮説は、その価値をソリューション(解決策)という形で仮説構築した際に受容されるかを確認する検証ポイントになります。また、ソリューション仮説の中でもユーザー体験に対する仮説検証であるUX検証、インターフェースとしての受容性を確認するUI検証、そして、動くものとしての体験とインターフェースを確認するMVP検証という3つの検証ポイントがあります。
この4つの検証ポイントについて、簡単な意味の解説については上記の通りですが、今回は「検証方法」「検証を進める上で大事なこと」「新たな問いに対する扱いの判断ポイント」についてもお話しできればと考えております。
前提
まず前提からお話しさせていただくと、今回お話しする内容については、新規事業の立ち上げやスタートアップ起業など、主にゼロイチ(0→1)フェーズにおける検証ポイントを対象になると考えております。1→10や10→100、100→1000など、一定プロダクトとして動くものができあがっており、PMFも達成されている場合のサイクルはまた異なってくると思いますので、ご理解ください。
検証の全体像
赤く囲っている部分が該当の検証ポイントでその中で事前に立てた仮説が正しかったのか、もしくは間違っていたのかを検証します。

検証方法について
問題仮説
問題仮説では以下の問いに回答する必要があります。
- その課題が世の中に存在するか
- その課題を持った顧客が世の中に存在するか。
- 現在の顧客はその課題をどう解決しているか。
- その顧客のその課題に対する我々が考える独自の価値に受容性があるか。
検証を行う上で想定ターゲットに対して、インタビューを行なっていきます。
インタビューの展開方法としては、基本オープンクエスチョンで想定ターゲットの1日の生活、1週間の生活、さらに必要であれば1ヶ月、半年、1年スパンの生活の流れを話していただきます。次にその一連の生活の中で感じるペインポイントを探ります。そのペインポイントと仮説で立てた課題とを照らし合わせてみるのと合わせて、その課題の裏返しである価値について確認します。もし、その課題がこうだったら?あなたはどう思うか?みたいな聞き方が望ましいかもしれません。
ソリューション仮説
ソリューション仮説に関しては、UX(体験)、UI(使い勝手)、MVP(行動)について、それぞれ検証を行なっていきます。
UX仮説
UX仮説では以下の問いに回答する必要があります。
- 課題を解決するために必要な最小限の体験は何か。
- このソリューションにいくらなら支払ってくれるか。
ここでは、我々が考えるソリューションの体験部分を切り取って確認を行なっていく必要があり、その手法としてワイヤーフレームを作成しそれをベースにインタビューを行なっていく形がベストであると考えております。インタビューの中身としては、主にワイヤーフレームを通じて仮説として立てているサービスの一連の体験を説明した後に、その体験の中で感じたこと(気になった機能、あなただったら使うor使わない?など)を確認していきます。これに合わせて、この体験に対価を支払うか、もし払うとしたらいくら支払うか、を確認していきます。
UI仮説
UI仮説で以下の問いに回答する必要があります。
- そのソリューションを顧客が理解できるか、また、使いこなすことができるか。
ここでは、顧客のサービス理解、使い勝手の理解についてプロトタイプを使う前段で確認する検証ポイントです。主にはコールドモックという、ワイヤーフレームより本番に近しいデザイン模型を用いて検証を行なっていきます。インタビューの中では、顧客にインタビュアーが口頭フォローすることなく、実際に動きが確認できる模型を触ってもらう(もしくは口頭で説明してもらう)ことで実際に我々が期待している行動をとってくれるかの確認を行います。一連の行動が完了した後、最後に使い方を理解できたか、使いやすかったか、などの確認を行なっていきます。
MVP仮説
MVP仮説で以下の問いに回答する必要があります。
- 前段のUX/UI検証を経てブラッシュアップしたソリューション仮説に対し、受容する行動をとったか。
- 顧客の課題が解決されたと感じたか。
- このソリューションにいくらなら支払ってくれるか。
このタイミングは、事業化判断を行うまでの最後の検証ポイントであるため、何を検証ポイントにおくかはステークホルダー間で慎重に決定する必要があります。その中で、最も着目すべきこととしては、今までのインタビューで顧客の口から発言されていたものが実際の行動として現れているか、という視点になります。インタビューでは”ぜひ使いたい”と話していたが、実際にプロトタイプを作って渡してみたときに”使われなかった”ということは往々にしてあります。こういった結果が得られたときにその理由を深堀って確認することで、実際の顧客の生活に当て込んでみたときのボトルネックなどの新たな課題を洗い出すことができます。また、別の視点として、このタイミングで改めてこのソリューションにいくら支払うかについて確認することをおすすめします。実際に使ってみて改めてこの価値に対価を支払いたいか、顧客としても新しい気づきを得られていると思います。
検証を進める上で大事なこと
各フェーズにおいて、検証すべき問いに関しては前章にてお話させていただきました。まずその問いに回答できる情報を集められることが大事なことではありますが、その中で、具体的で細部に渡るインタビュー結果を抽象化する能力がここで求められます。抽象化する能力とは、ただ細かい内容をサマライズすれば良いのではなく、抽象化した結果から”次の方向性を示し相手を納得させること”までがスコープであると考えます。
ただし、この”相手を納得させる”という部分がアーリーフェーズであればあるだけ各々の解釈のボラティリティの幅が大きく難しいです。そんな時に1つ活用できそうだと考えていることが以下になります。
- 回答仮説や判断基準をあらかじめ設けておく
回答仮説とは、インタビューを行う中で我々が後続の検証に進むにあたって期待する回答(また、その逆で再検討が必要と判断すべき回答)を用意しておくという考えになります。また、判断基準とは、定量的な集計が可能な時に同じく基準となる定量値をあらかじめ設定しておくということです。これを事前に行っておくことでインタビュー結果における各人の解釈の幅を一段階狭めることが可能となります。
新たな問いに対する扱いの判断ポイント
検証を進める中で、今まで不明確だった部分がクリアになるのに併せて”新しい問い”が出てきます。この新しい問いが発現した際に、後続の検証タイミングでまとめて確認すべきか、既に終了した検証ポイントに立ち返って再度検証を行うべきか、というプロジェクト進行に関わる議論が湧き上がってきます。このような場合の考え方として、以下のようなものがあると考えます。
- プロダクトのコアに関わる問いか。
- プロダクトのコアが変わる否かに関わる重要な問いか。
- 顧客がプロダクトを使うか否かに関わる重要な問いか。
- そのフェーズでしか確認できない問いか。
新しい問いが上記の観点に該当する問いでない場合は、後続工程でまとめて確認する(もしくは確認しない)という整理で良いと考えますが、ヒト・モノ・カネのバランスに鑑み許容できるのであれば、ステークホルダーのキーマン(会社、個人)が、納得いく方針を取るのも一つの手ではあると考えます。
例を見ていきましょう。以下のような新たな問いが、UX検証完了後に浮上したとします。
・今のソリューション仮説だと日常的にユーザーがアプリを更新くれるかが怪しい。
このような問いが出てきたときに先ほど羅列した判断ポイントと照らし合わせてみると、
「プロダクトのコアに関わる問いか」については、習慣化を促す機能についてはプロダクトのコアとは呼ばないでしょう。また、「プロダクトのコアが変わる否かに関わる重要な問いか」についても上記と同様に該当しないと思います。「顧客がプロダクトを使うか否かに関わる重要な問いか」については、一部当てはまっているかもしれません。例えば、日常的にデータを登録することで出力されるレポート機能がこのプロダクトのコアなのであれば、顧客が使うか否かに関わる重要な問いに該当すると思います。この判断ポイントを保留として次を見てみると、「そのフェーズでしか確認できない問いか」については、後続のMVP検証の中で実際にすることが可能となります。もっと言うと、MVP検証では、顧客の発言ではなく実際の行動を見るので、より確度の高い検証結果を得ることができると思います。
上記の通り総合的に分析した結果、後続工程でまとめて検証することが妥当であるという結論になると思います。
まとめ
今回は新規プロダクト開発における4つの検証ポイントについてお話しさせていただきましたが、まとめると以下の通りになります。
- 新規事業の立ち上げや起業などで新規プロダクトを検討していく中で4つの検証ポイントがある。
- 検証を進める中で大事なことは、回答仮説を持つこと、またその判断基準を持つこと。
- 検証の中で発現した新たな問いについて、後続工程でまとめて検証するか、手前の検証ポイントに立ち返るかの判断ポイントを持つ。
上記で記載した3点を意識して新規プロダクト開発に臨んでいただけると、今までよりスムーズにプロジェクトを進めることができると思います。